【短編】たぶん、その響きだけで。
きみが呼ぶ


小さいころから、予知夢みたいなものをよく見た。

中でも印象的だったのが、
巨大な岩みたいなものがとてつもない火を纏いながら、ものすごい速度で突き進んでいく夢。

でも俺はそれを遠巻きに見ているだけで、それに巻き込まれるとか、被害を食らうとか、そういうことは一切なかった。



『大丈夫だよ、セナ』



───俺の知らない、けれど確かに俺を知っている誰かが、それを止めてくれたから。



「あっねえセナ!ガチャガチャある!やろ!」



そう、スミが俺の裾を引っ張った時だった。

あの夢の映像が、一瞬で、まるで実際に体験したみたいに鮮明に呼び起こされたのは。



「わ、すごいきれーな星柄!ね、セナは何の柄……」

「……」

「セナ?」



返事のない俺を覗き込むみたいに、首を傾げた彼女の小さな口が、ゆっくりと俺の名を呼ぶ。

俺はその響きを、もうずっと昔から知っていたんだ。


心臓が、嫌になるほどうるさく音を立てている。


だってあれがもしもきみなら、きみは、───スミは。



「……スミ、俺ガチャガチャ、スミが出したやつがいい」

「え、セナ星柄好きだっけ……?」

「……俺の方が、向いてるかなって」

「星を持つのに才能が要る……?」




まあいいけど、としぶしぶ差し出されるストラップを受け取って、俺が引いたのを握らせる。

スミの出した星柄は、もうきみが持つものじゃない。

それを背負うのは、俺のほうがたぶんいいんだ。


───その日俺は、スミと俺の運命を交換した。


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