錬金術師のお姫様
 媚薬を作る、はずだった。

 一口飲むだけで気分と肉体が高揚し、目の前にいる人物に恋い焦がれ、その存在を欲して欲してどうしようもなくなるような。

 そんな媚薬を作る、はずだった。

 摘みたての薔薇の花びら、晴れた日の朝露のしずく、静寂の月光の結晶、風が吹く丘で作られた黄金葡萄のワイン。それらを錬金術専用の釜で煮てクリスタルの瓶に移し三日間置いておく。
 そして仕上げに手に入れるのに苦労した『最後の材料』を入れれば、薄紅色の可愛らしい液体として完成するはずだった薬。

 けれど。
 何故か透明な紫のスライム状に変化したソレ(・・)は、確実な意思を持って弾力性の有る触手をこちらへと伸ばしたのだった。


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