哀しみエンジン
あくまで、表には出さないが、かなり不安だった。
──それなのに、何で俺、引き受けたんだ。
「大丈夫!」
「大丈夫ですかね……」
「うん。こういう時は、自分も子どもに戻ったら良いよ」
「は?」
「自分にだって、幼い頃があったわけだし。はじめ、自分1人で楽しんで、遊んでごらん。そうしたら、みんな自然と寄ってくるから」
「そんなもんですか?」
「そんなもん、そんなもん。ただ危ないことしてたら、怪我する前に注意して、見ててあげて。何かあったら、親御さんに申し訳ないし、こういう活動が出来なくなっちゃうから」
「わかりました」
清水さんは頷く。
「きっと楽しめると思うよ。ここでなら、苦手なことも、いつか好きになれるよ」
控えめな笑顔に、魅せられる。
本当に何なんだ、この人。
自然と力んでいた体、こんなにも手汗が滲んでいたことに、たった今、気付かされる。
最初から不思議な魅力がある人だったけど。
控えめな優しい笑顔に見惚れていると、突然、彼女の顔が変化した。
「あ、おはよ」
「清水、おはよう。悪いな。遅れた」
彼女をまた強張らせるのは、例の如く服部先輩だ。