哀しみエンジン
「そういえば……」
彼女のか細い、だけど温かみを帯びた声を聞き逃さない俺は、よっぽどなんだと覚る。
清水さんの方を見れば、彼女もまた全く違うところを見ていた。
土を弄って遊ぶ、自身の足下を見ていた。
そして、そのまま言葉を続ける。
「聞いてもいい?」
「何をですか」
「どうして、サッカー部を辞めたのか」
「……ああ。それは」
この話題が、清水さんの口から出るとは、まさかだった。
彼女には直接、関係の無い話題なのに。
「辞めた」ことについての一体、何が知りたいのか、そんなこと勘繰ったところで、それこそ意味は無い。
素直に、ありのままサッカー部の惨状を伝える。
話を聞いてくれる清水さんは、至って落ち着いた様子で、相槌を打っていた。
清水さんのそれに、俺も落ち着いて話すことが出来ていた。
それどころか、今まで抱いていたはずの、先輩たちへの嫌悪感すら、洗い流されていく様で。
今はただ「たかがそんなこと」で「好きなこと」を諦めてしまった自分を思うと、悔しくて。
視界が滲んで、静かに揺れた。