哀しみエンジン
「そっか。サッカー部、今もそんな感じなんだね」
俺を気遣う口調で言う。
「今も」と言うなら、そういうことか。
清水さんも知っていたらしかった。
恐らく、あの人からも愚痴られていたに違いない。
「それは、辛かったね」
囁くような声は、直ぐに俺の耳に届いて、内側にまで浸透していく。
愛だの恋だのに興味はない、などと強がるのは止めて。
この人に興味がある、などと回りくどい考えたなど止めてしまって。
認めよう。
俺、清水さんのこと、好きだ、と。
だから、自分が泣く姿なんて、好きな人に見せたくない。
うつ向いて、顔を隠す。
しかし、涙やいろんな気持ちを我慢している俺に容赦無く、清水さんは続ける。
「それでも、しばらく頑張ってた直江くんは、凄いね。きっと、しっかり者だからだ」
「全然。『しっかり』とは、程遠いところに居ますよ」
「そうかな。服部くんから聞いてるよ」
ほら出た、また「服部くん」だ。
その名前が、俺の気持ちを妙に揺らがせる。