哀しみエンジン



3人の男子生徒は、清水さんの道を塞いでいるように見える。

何をしているのだろうと、目を凝らして見ても、見なくても、何となく分かった。

大きな段ボールを抱えた清水さんを、彼等が助けようとしている訳でもなさそうなことくらいは。

俺は苛立ち、イヤホンを耳から引き抜く。

3人組の男子生徒に歩み寄り、何も考えず声を掛けた。



「邪魔なんですけど。そこで突っ立って居られると」



一番に目が合ったのは、清水さんとだった。

微かに顔を赤くして、若干、汗が滲んでいる。

いつも真剣な眼差しか、微笑んでいるか、どちらかの彼女がこんなにも困っている。

腹立たしかった。

それは、その3人の正体に気付いたら余計にだ。

俺の知っている中で、特に人の神経を逆撫でるのが上手い奴等。



「うわ、直江じゃん」

「サッカー辞めて、こんなサークルに入ったのかよ」



──「こんな」サークルだと?

気に入らない。

とことん、こいつ等が気に入らない。

だから、もうあの時のように我慢なんてせずに、いい加減に遠慮なく言ってやってもいいだろう。

だって、清水さんは俺のこんなところを「正義感」なのだと、教えてくれたから。


< 25 / 44 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop