哀しみエンジン
2人の会話が途切れたのを見計らって、声を発する。
「清水さん」
先程、言いかけた名前を今度こそ、しっかりとした口調で言い切る。
それに気が付いてくれた清水さんと、目が合った。
ついでに服部先輩も、こちらを向く。
服部先輩が、何か言いたげだ。
俺としては、不意に現れた意外な敵だった。
年下の、中学生くらいが好きなのだと、正直思っていた。
そんなことはその人の自由だろうが、なかなか際どいラインだ。
これは馬鹿にしている訳では決してなく、日頃の行動を見て、本心から勘違いしていた。
「服部先輩。清水さん、ちょっと貸してください」
「……清水は物じゃない。失礼だろ」
服部先輩は至って真剣な表情、口調で居る。
そうか、そんなに真剣に彼女を想っているのか。
これも今頃、思い出したが、いつもやって来てから一番に挨拶をするのは、そう言えば清水さんだ。
それから素っ気なく離れ、後輩に構いに行くから、すっかり騙されていた。
そんなところから、ルーティンが出来上がっていたなんて。
吃驚しながらも、納得する。
が、譲るつもりはさらさら無い。
「そうですね、すみません。清水さん、ちょっと一緒に来てもらえませんか?」
「うん、いいよ。どうしたの?」
「こっちを少し手伝ってもらいたくて。とりあえず、来てください」
ここでただ絆創膏を持っているか、と聞けば済む。
しかし、服部先輩に独り占めさせるのが、気に入らないので、連れ出してしまいたかった。