哀しみエンジン



清水さんは素直に承諾してくれて、すんなりと立ち上がる。

作業関係のことで、困って頼んだのだから、素直だとかそんなことは関係無いのかもしれない。

それでも、何となく優越感を感じる。

思わず、それが顔に出てしまっていたようで、服部先輩には珍しく、不服そうな表情をしている。



「何ですか? 怖い顔して」



気にする清水さんを促して、その場を離れる。

そして、本来の目的を忘れてはならない。



「清水さん。絆創膏、持ってませんか」

「どこか怪我したの?」

「いや、友達が」



すると、清水さんは一度目を見開くと、嬉しそうに微笑む。



「あるよ」



そう言って、清水さんは自身のショルダーバッグの中を探し、裸の絆創膏を差し出す。

お礼を言って、それを受け取る。



「え? それだけ?」

「はい」

「あ、そっか」

「はい」

「そう……」

「……他に、何かあってほしかったですか?」



俺の中の意地悪い部分が出てきて、つい口元がニヤけた。

すると、清水さんは慌て出す。



「な、何言って……」

「冗談です。すみません。清水さんもお忙しいのに」

「そ、それは大丈夫だけど」



そうやって、照れた仕草をするのは狡い。

俺だって、期待してしまう。


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