哀しみエンジン
「良かったら、俺が清水さんと一緒に行きます」
そうしたら、もし清水さんに何かあったとしても、俺が何とかできるし。
俺が口を挟むと、やはり服部先輩は良い顔はしない。
──そんな顔するくらいなら、スパッと言ってしまえば良いんだ。
あの時の、サッカー部の時だって。
結局、それ以上、何も文句は言ってこなかった。
清水さん達と居られるのも、今年で最後。
今がきっと、けじめをつける時なんだ。
そうして、2人で電車で移動をして、河川敷の桜並木に向かった。
その道中、清水さんが最近話題になっているスイーツの話を聞いたり、俺が最近ハマっているアーティストの話をしたり。
ただただ、楽しい時間を過ごした。
しかし、河川敷に着いた途端、清水さんの足取りが重くなった。
服部先輩のことでも考えてるのではないか、と少し気を遣って先に行き、距離を置く。
今はある意味、護衛をするために一緒に来ているのだ。
時々、後ろを確認しながら歩く。
しかし、とうとう清水さんの足は、止まっていた。
思い悩んでばかりの清水さんを、もう見ていたくない。
きっと俺が告白してしまえば、急いてあの人の尻にだって火がつくだろう。
でも、俺はそれで本当に良いのか?
良い訳あるか。
それでも、だ。