哀しみエンジン
「分かった。連れてく」
服部先輩というらしい、その人は俺をじっと見ると言った。
「もしかして、噂になってる推薦で来た奴か?」
「はい」
「そうか。よろしく」
「よろしくお願いします」
頭を下げて、簡単な挨拶を済ませる。
そして、俺の視線は、つい「清水」先輩に戻っていく。
目が合うと、また微笑んでくれた。
──清水さん、か。
すると、清水さんは服部先輩を見上げる。
「あの、さ。ご本人さんさえ良ければ、ゆとりとか出てきた頃にボランティアサークルも見てもらえたらな、なんて……」
然り気無く、首を傾げる姿はあざとい。
大人しそうに見えて、あざとい。
「うん。でも、推薦で来た奴だから、そういうのはどうだろうな」
「無理には言わないけど、また、試しに」
「……気が向いたらな」
「うん。お願いします」
間を置いてから返事をした服部先輩は、心なしか少し納得がいっていない様子だ。
いきなり俺が気にくわないのか、それとも、2人が付き合っていて、嫉妬しているだけか。
初対面な筈が、とてもモヤモヤする。