哀しみエンジン
きっと、後悔することは俺が言わなくても、清水さんなら、分かり切っているに違いない。
他人の気持ちを読み解くように、いつも活動している彼女なら。
俺が気まずくさせてしまったが為に、清水さんは逃げる様にどこかへ行ってしまった。
この時、自分でもびっくりするくらい、落ち込んでいる。
もう考えるのも、疲れてきた。
一瞬でも良いから、あらゆる感情を振り払いたくて、チューハイを煽る。
「直江ってさぁ」
何も考えたくないのに、そんな時に限って、服部先輩が俺に構う。
「いつでも、人の核心を突いてくるよな」
「それが、事実だからですよ」
不機嫌な奴を気取って、無愛想に言ってみた。
が、次の瞬間、息が止まりそうになった。
「直江、お前って……」
「何ですか」
「……やっぱり格好良いな」
それだけを言った服部先輩の表情は、いつかのサッカー部の頃の温かった先輩の面影と重なった。
つい何も返せなくなる。
そして、先輩が静かに立ち上がり、どこかへ行ってしまうようだ。
せっかく一瞬、距離が狭まったと思ったのに。
また放って行かれる。
そんな気分だ。