哀しみエンジン


「そんな意気込みは要らない」



静かな瞳の中に、僅かに圧を感じた。



「喧嘩の仲裁に入ってくれた先輩に、怪我をさせて……まぁ、その人も今は部活来なくなったけどな」

「……そうなんですか」

「なんか元々、その人も部の雰囲気に、うんざりしてたらしい」

「あの雰囲気になって、何年も経ってるってことですか」

「ああ。変えてく方法は、あいつ等を辞めさせるか、あいつ等がやる気を出したくなるようなことを考えるか。あとはいっそのこと、サッカー好きな奴を外から集めてくるか……他に何か方法あるか?」

「直ぐには、思い付かないですね」



とは言え、このままで良いとは到底、思えない。

俺の唯一したいと思えることなんだ、それなのに。

このままでは嫌だと、悔しくて、唇を噛み締める。

服部先輩は、生意気に意気込んでいた俺の変化を見抜いてか、言い聞かせるように言った。



「お前もくだらない喧嘩ごときで、せっかく夢中になれること、辞めたくないだろ」



先にストレッチを終えたらしい先輩は、俺の横を通り過ぎて行く。

その時に、肩に手を乗せられた。

宥められたのだとしても、納得がいく訳もなかった。
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