音楽はいつも一緒に
 数日間はいろんなことが駆け足でやってきて、知らない顔ばかりのクラスメートに緊張しながら挨拶をして、学校1日目が終わろうとしていた。

 帰ろうと準備をしていたとき、担任に話しかけられる。

「佐賀さん、部活のことなんだけど」

 隣になったクラスメイトにどんな部活があるのか、あらかじめ聞いていた。

「先生、私合唱部に入ろうかと思うんです。伴奏、前の学校でもしてて」

「あら、いいわね、ちょうど私が顧問なのよ。去年の冬に転校してきた男の子が今伴奏を担当してるんだけど、その子と交代でやってもらおうかしら」

「去年の冬に転校してきた男の子?」

 ピアノ、転校、冬、その言葉を聞いて彼を思い浮かべないほうが無理があった。

 ただの言葉、普段なら、聞き流すような言葉に、今は心臓をどくどくと鼓動させる。

「ええ、隣のクラスの松田くんって言うんだけど」

「え…………松田、ですか?」

 その名前を聞いた瞬間、目を見開いた。松田、松田くん。

 嘘としか、思えない。
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