LOVEPAIN⑦シリーズ全完結しました
「あのさ、鍵もそうなんだけど、
その指輪返して」



ナツキにそう言われ、自分の左手の薬指を見た。


そこには、ナツキとお揃いのクロムハーツのリングがある。



「そうだよね」



今度こそ、ちゃんと返さないと。



私はキーケースから、この部屋の鍵を取り外しナツキに渡した。


そして、その指輪を外す。


「今迄ありがとう」


そう言葉にして、そのリングをナツキの手の平に置いた。



「やっと返って来た」


ナツキはそのリングを、自分の左手の小指に嵌めた。


そのリングは、ナツキの心そのもので。



やっと、ナツキに返せた。



「広子、最後にお願いがあるんだけど」



「なに?」



「もう二度と、俺の前に現れないで」


そう言ってナツキは、何処か悲しそうに目を伏せた。


そうか。


私達は、もう二度と会えないのか。


「ナツキとこうやって別れるのは、
3度目だけど、もう4度目はないんだろうね」


「そういう事」


私は、なんだがそのナツキとの別れが辛くて、
込み上げて来る涙が溢れる前に、

その荷物を持って、玄関の扉のプッシュプルハンドルに手を掛けた。




「二度と、俺の方を振り返らずに出て行って」


その言葉を背に受け、私はもうナツキの方は振り返らずに、部屋から出た。


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