LOVEPAIN⑦シリーズ全完結しました
それから30分くらいして。


同じフロアの待合室で缶ジュースを飲んでいると、
外の廊下をコウジロウさんが通り過ぎるのが見えた。



「…コウジロウさん!」



思わず、私は彼を追いかけて呼び止めてしまった。



「広子ちゃん?」


私を見て、コウジロウさんは少し驚いたようだけど、
私と成瀬の今の関係を察したのか、
ああ、って感じで笑った。


「あ、あの、ありがとうございました」



「何が?」


「私、最後の撮影の時、コウジロウさんや他のスタッフの人達に、
挨拶して無かったから」



まだ、この人を許せないような気持ちはあるけど。


けど、こうやって成瀬を心配してお見舞いに来てくれているこの人は、
きっと、悪い人ではない。


金村監督や、成瀬と同じように、
悪魔なのかもしれないけど。



「ああ、なるほど。
元気でね。
また会う事はないだろうけど」



そう言って、コウジロウさんは私に背を向けて歩いて行った。


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