LOVEPAIN⑦シリーズ全完結しました
「篤が私に近付いたのは、
あの事務所から私の事も引き抜こうとしたから?」


何処かで、それが気になっていた。


もしかしたら、篤が私を好きだと言ってくれた事さえ、
本当は、嘘だったんじゃないかって。


引き抜かなくとも、成瀬の事務所を辞めさせたくて、成瀬よりも自分に気を引かせた、とか。


私もあの事務所の、主力のAV女優の一人だったから。



篤は私のその言葉に、ただ悲しそうに目を伏せた。



「そんな風に、思ったか?」



そう訊かれ、私は何も答えられなかった。


そうじゃない事を、私が誰よりも分かっていないといけないのに。



そうやって訊いてしまった事を、
後悔した。



「別に、そうだ、って言っても構わねぇけど。
そうだって言った方が、お前も俺も楽になれんのかもしんねぇし」


けど…、そう言って、篤は言葉を続けた。



「そう言ったら、お前との付き合ってた3ヶ月が嘘になるだろ。
それは、やっぱ嫌だ。
俺は本気でお前が好きで、付き合ってた間、本当に楽しかった」


その篤の言葉に、その3ヶ月の毎日が頭に浮かぶ。


これと言った思い出のない私と篤との付き合いだったけど、
本当にその1日1日が幸せだった。



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