政略夫婦の愛滾る情夜~冷徹御曹司は独占欲に火を灯す~
 おとといはコーヒーを出すよう頼まれた。

『燎の嫁に織田のお嬢さんをと思ってね。君はどう思う?』

 ついでのように聞かれたけれど、コーヒーの方がおまけだったに違いない。

『お似合いだと思います』

 精一杯微笑んでそう答えると、須王会長はじっと私を見つめたまま満足したように頷いた。

『是が非でも織田の協力が欲しいのは、私の独断というわけだけではないんだよ。わかるね?』

『はい』

『子会社までいれれば、うちには一体どれほどの社員がいるか君はわかるかい? その社員を家待つ家族もいれたら何人になるか考えたことはあるかな?』

 想像すらできなくて、左右に首を振り口元から苦笑いがこぼれた。

『なのに、あいつは我儘を言う。困ったもんだ』

 どう答えていいかわからず、あいまいな笑みを浮かべたけれど。

 さて、今日は何を言われるのか。

 想像しただけで、心はずっしりと重たくなる。

「会長、なんか変よね。紗空ちゃんのこと凄く気になるみたい」

「そうですか」

「いいじゃないね、別に息子が誰を好きになろうと」
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