政略夫婦の愛滾る情夜~冷徹御曹司は独占欲に火を灯す~
正義の味方に助けられたような気分で、『ありがとうございます』と、胸をときめかせてお礼を言ったけれど、彼は変わらない表情でチラリと一瞥し、無言のまま通り過ぎていったのである。
「お友達が『紗空ちゃん! 彼が須王さまよ』って教えてくれました」
「へえ。須王さまねぇ」
「はい。さんじゃなくて"さま"と呼ばれていました」
彼はポケットに手を入れたまま歩いていた。その仕草は上品ではないはずなのに、その名の通り王たる気品をまとっていた。
「実際とてつもなくかっこよかったです。まぁ、なんていうか。雲の上の人でしたよ。青扇でもトップクラスの方でした」
「なるほどね。それで? 西園寺ホールディングスにもいるの?」
「え?」
ハッとして心臓が止まるほど驚いた。
咲子さんには何も言っていないはずなのに、どうして西園寺の名前が出るのか。
「だって紗空ちゃん、よーく隣の西園寺ビル見てるもの」
鋭い! 思わずぐぬぬと唸る。
「あ、そ、それはその。私の憧れの先輩たちが何人もいるんですよ、あそこには」
「お友達が『紗空ちゃん! 彼が須王さまよ』って教えてくれました」
「へえ。須王さまねぇ」
「はい。さんじゃなくて"さま"と呼ばれていました」
彼はポケットに手を入れたまま歩いていた。その仕草は上品ではないはずなのに、その名の通り王たる気品をまとっていた。
「実際とてつもなくかっこよかったです。まぁ、なんていうか。雲の上の人でしたよ。青扇でもトップクラスの方でした」
「なるほどね。それで? 西園寺ホールディングスにもいるの?」
「え?」
ハッとして心臓が止まるほど驚いた。
咲子さんには何も言っていないはずなのに、どうして西園寺の名前が出るのか。
「だって紗空ちゃん、よーく隣の西園寺ビル見てるもの」
鋭い! 思わずぐぬぬと唸る。
「あ、そ、それはその。私の憧れの先輩たちが何人もいるんですよ、あそこには」