政略夫婦の愛滾る情夜~冷徹御曹司は独占欲に火を灯す~
 今更だけれど、今だからこそ聞けそうな気がして思い切って聞いてみた。

「あの、私はどうしてtoAに配属になったのですか?」

 ふわりと微笑んだ鈴木さんが答えた。

「須王燎さんが、どうしてもということでしたから」

「専務が? ――あの、なぜ専務が」

「それはご本人からお聞きになる以外にはないと思います。理由は伺っておりませんのでね。一度ちゃんと聞いてみたらいかがですか?」

「でも、私はもう辞めてしまったし。お会いする機会もないですから」

「聞かれるのを待っているかもしれませんよ?」

「え? で、でも」

 奥様が嫌がるだろうとは言えず、うやむやに口ごもった。

「もしかしてご存じないのですか? 彼と織田さんとの結婚の話が消えたことは?」

 鈴木さんは意外そうに首を傾げた。

「専務は、結婚しないのですか?」

「ええ」

「――知らなかったです。最近ニュースも読んでいなくて」

 鈴木さんは頷いて、ならばと順を追って説明した。
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