政略夫婦の愛滾る情夜~冷徹御曹司は独占欲に火を灯す~
『だったら何故だ。八つ当たりか?』

 加郷はフッと皮肉な笑みを浮かべた。

『自分だけがあきらめるんじゃ、つまらないだろ? あんたにも落ちてもらおうと思ったわけ。ま、敵わなかったけどさ』

 加郷に渡された織田の資料を手に、俺が最初に向かった先はスオウグループ本体がある大阪。

 父に会いに行った。

 全てを知った父、須王会長は、長い長い沈黙のあと『すまなかったな』と、初めて息子に謝った。

 それからは世の中が知る通りだ。

 織田からほしいものを買い叩き織田とはきっぱりと縁を切った。隠し子とはいえ息子がしでかした事件と失敗を、織田社長は当然知っている。こちらの提案を無条件で受け入れた。

 その後、織田の数々の悪事がネットに流れたが、それはおそらく加郷の仕業だろう。須王とは一切関係ない。

 紗空に関しては除外しつつ、コウと鈴木にはひと通り話して聞かせた。

 なるほどねと、コウが呆れたようにため息をつく。
「それだけ頭のいい息子がいるなら、正規に重用すれば織田もなんとかなっただろうに」
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