政略夫婦の愛滾る情夜~冷徹御曹司は独占欲に火を灯す~
 ぐっと堪えていると、コウが「そういえば君は」と鈴木に向かって言い出した。

「随分あの子に親切だったな。あんなことまで懇切丁寧に教える必要があったのか」

「リップサービスですよ」

 一体何の話だ。

「は? 何に対しての、何のサービスなのかな? え?」

「まあ色々と。それにしても、吉月さんもやはり青扇ですね。遠くからでもすぐにわかりました」

 コウの突っ込み具合からするに、随分話をしたらしい。

 気持ちを落ち着けたところで聞いてみた。

「偶然会ったのか?」

「ええ。昼食をどこでとろうか考えていたところで、見かけましてね。目立っていましたよ」

「わかりきったことだ」 

 話を変えられたことにムッとして、コウは眉をひそめる。

「銀座ならともかく、地方都市では目立って当然だろう。青扇の娘なんだから」

「あはは、まぁそうですね」

 コウの言う通りだ。紗空の、内から滲み出るような品の良さは隠しようがない。軽やかに歩く姿は匂い立つ花のようだから。

 だが今はそんな話はいい。

「それで?」
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