政略夫婦の愛滾る情夜～冷徹御曹司は独占欲に火を灯す～

「おいしいレストランを教えていただいて一緒にランチをしましたよ」

「そうなのか？　それでどうだった？　何か言ってたか？」

　つい気になって前のめりになってしまった。

「おい燎、なんなんだそれは。盛りのついたカンガルーなのかお前は」

「カンガルー？　なに言ってるんだ。飯食って何を話したか聞いてるだけだろ」

「怪しい」

「うるせえな。聞いたことには答えろよ。色々教えてやったんだから」

　目を細めるコウはそっぽを向く。

「理由を言わなければ嫌だね」

「はあ？　知りたい。これが理由だ」

　なんだかんだ騒ぎながら、それでも帰り際に鈴木がこっそり教えてくれた。

「彼女は実家にいるそうです。バイトをしようと思っていると言っていました」

「元気そうだったか？」

「ええ。あなたが結婚したと思っていたらしく、それは誤解だと伝えておきましたよ」

「そうか……。ありがとうな」

「いえ。彼女ですよね。花柄の絆創膏を貼ったのは」

　思わず笑った。

「よく覚えているな。ああそうだ、彼女だよ」