政略夫婦の愛滾る情夜~冷徹御曹司は独占欲に火を灯す~
「彼女はとてもあなたを心配していたそうですよ」

(え?)

「そもそも、あの時あなたは、突き放したとしても必ず迎えに行く、そう心に誓ったのではないのですか」

 宗方の声は次第に強くなっていく。

「吉月さんを守るためにしたことなんですよね!」

 いつになく荒げた声に振り返った。

「なのに、いつまで呑気に憂鬱ぶっているんですかっ! 専務」

「ちょ、なんだよいきなり」

「吉月さんは今でも、あのブレスレットを外していなかったそうですよ。西園寺さんに確認しました」

「え? なんで、ブレスレットのことを?」

 息を切らしかけた宗方は大きく息を吸い、キュッとネクタイを整えた。

「出張のたびにジュエリーショップを覗いていらしたくせに、何を今更。北海道で同じ部屋に泊まったことも知っています。言わなかっただけで」

 全てお見通しってわけか。

「――午後の仕事はキャンセルしていいか」

 宗方はようやく頬を上げて「了解です」と頷いた。

「明日もキャンセルしましょう。しばらく休んでいないのですから」


 ***

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