政略夫婦の愛滾る情夜~冷徹御曹司は独占欲に火を灯す~
 すると驚いたことに彼は、拳を掌で受け止めたのである。

『あんた、頭がいいだけじゃないんだな』

『中学を卒業するまで剣道をやっていたもので』

『うちのオヤジから何か言われて、そうやって付いてくるのか?』

 生徒会長は左右に首を振ると、困惑するような笑みを浮かべた。

『強いていうなら、君の友人から、気に掛けるようにと頼まれています』

『仁とコウ?』

 生徒会長は頷いた。

 西園寺洸と氷室仁は幼稚舎からの親友だ。ふたりと一緒にいると、決まって女が寄ってくる。それがうっとおしくて学園ではあまり行動を共にしなかったが、友情は変わらない。

『あ、すみません。ふたりには内緒だと言われていました』

 生徒会長は肩をすくめて、また困ったように笑った。

 結局、荒れたところで父はビクともしない。友人に心配をかけるだけだという現実を受け入れた。

 生徒会長の笑みにつられて笑ったその日が境になり、俺はただ反発するだけの生活から離れていった。ぎりぎりの出席日数ではあったが無事進級もできた。
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