政略夫婦の愛滾る情夜~冷徹御曹司は独占欲に火を灯す~
「なに? どうしたの? あいつって?」

『須王燎だよ』

 専務?

『俺さ、紗空を辞めさせるのを条件に、toAにウィールス仕込んだんだ』

「なにそれ。加郷何したの?」

『心配すんな、未遂で終わったから』

 加郷の話を聞いているうちに、手伝いのおばちゃんたちが騒ぎ始めた。


「あらまぁー、随分高そうな車だねー」

「長い車だねー。あれをリムジンって言うんかな?」

「あれ? 誰か降りてくるよ」

 ――リムジン?

 じゃあなと話を切り上げる加郷に元気でねと告げて電話を切った。

 振り返ると、ちょうど噂のリムジンから、スーツ姿の若い男性が降りるところだった。

「……専務?」

「え? 紗空ちゃんの知り合いかい?」

「さすが紗空ちゃんだねー。すごい知り合いがいるもんだ」

「あれ? 花束持ってるよ」

「ひやー。随分でかい花束だねー」

 ふと母が、紗空の手を取った。

「行ってあげなくていいの? 紗空に会いに来たんじゃないのかしら?」

 母を振り返った時には瞳が涙で潤んでいた。
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