政略夫婦の愛滾る情夜~冷徹御曹司は独占欲に火を灯す~
ビルの隙間から高く澄み渡っていた青い空が、ゆるゆると群青色に染まっていく。
時は九月。
秋の訪れを夕暮れに感じながら、鮮やかな褐色に彩られたメタセコイヤの並木道を思い出した。
(――きれいだったなぁ)
思いを馳せたのは、十年ほど前の記憶。
正門から続くイチョウ並木は黄色に染まり、和風庭園はイロハモミジが真紅に染めた。落ち葉は愉しげに踊り、吹く風は芳しい花の香りをのせて髪を揺らし、何もかもが夢のように美しかった私の母校、青扇学園。
さらに深い記憶を探ろうしたところで、パチパチと拍手の音が鳴り響き、現実に引き戻された。
ここは青扇学園の麗しい遊歩道ではなく、無機質なコンクリートの中。株式会社toAの総務課のあるフロアで、退職する後輩女子社員が、花束を受け取ったところだった。
「ありがとうございます」
深々と頭を下げる彼女を見つめながら隣に立つ先輩が、目を細めてハァとため息をつく。
「羨ましい」
時は九月。
秋の訪れを夕暮れに感じながら、鮮やかな褐色に彩られたメタセコイヤの並木道を思い出した。
(――きれいだったなぁ)
思いを馳せたのは、十年ほど前の記憶。
正門から続くイチョウ並木は黄色に染まり、和風庭園はイロハモミジが真紅に染めた。落ち葉は愉しげに踊り、吹く風は芳しい花の香りをのせて髪を揺らし、何もかもが夢のように美しかった私の母校、青扇学園。
さらに深い記憶を探ろうしたところで、パチパチと拍手の音が鳴り響き、現実に引き戻された。
ここは青扇学園の麗しい遊歩道ではなく、無機質なコンクリートの中。株式会社toAの総務課のあるフロアで、退職する後輩女子社員が、花束を受け取ったところだった。
「ありがとうございます」
深々と頭を下げる彼女を見つめながら隣に立つ先輩が、目を細めてハァとため息をつく。
「羨ましい」