政略夫婦の愛滾る情夜~冷徹御曹司は独占欲に火を灯す~
 今日は、秘書課異動の日。足取りがぎこちない。緊張を隠せないままtoAビルの前で立ち止まった。

 磨き抜かれたたガラスには、いつもと少し違う自分が映っている。

 コートの中は明るいグレーのスーツ。色を抑えたメイク。

(うん。大丈夫、大丈夫)

 異動するにあたって、秘書課の女性達を観察してきた。その上で、さんざん悩みながら出した答えがこのスタイル。良くも悪くもないはずだ。

 ヨシッと自分に言い聞かせ、
 そのまま隣の西園寺ビルにも目を向ける。

(がんばってきます! 待っていてくださいね)

 ただやみくもには頑張れない。意地でも西園寺に行くと決意をして、きつく拳を握る。

 秘書課で頑張れば、向こうでも秘書課に配属されるかもしれない。青扇学園の憧れの先輩たちとの距離も近くなると思えば、やる気も湧いてくる。

 とにかくがんばる。

 そう、ただしっかりとがんばるのみ! 気合十分に秘書課の扉を開けた。

「おはようございます」
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