政略夫婦の愛滾る情夜~冷徹御曹司は独占欲に火を灯す~
 誰の目もないので、スマートホンを覗いたり手帳を開いたり、挙げ句にはバッグの中から文庫本を取り出して読んだりしていたが、どうしたものか。

 ため息をつきながら見つめる専務室の扉。

(――もしかして)

 今まで彼とは絶対関係ないと言い張ってきたけれど、実はひとつだけ気になる点があった。

 私と西園寺ホールディングスとtoA。

 その三つが唯一繋がるのは、みんなが噂するとおり青扇学園。西園寺ホールディングスの創業者一族御曹司、西園寺洸さんも青扇学園出身で、須王さんとは同級生。彼らはたぶん仲のいい友人。

 細いけれど糸は繋がっている。

 toAに配属されたのも秘書課に異動になったのも、その糸が関係してる?

 ぶるぶると頭を振った。

 何を考えたところで想像の域を超えない。無駄だ。

「はぁー」

 ため息をつくと、デスクの上には閉じられたノートパソコンが目に留まった。

 何度か手を掛けてみたものの、開けていいかどうかもわからずそのままにしてあるが、果たしてそれが正解なのか。
< 29 / 206 >

この作品をシェア

pagetop