政略夫婦の愛滾る情夜~冷徹御曹司は独占欲に火を灯す~
 サーバーに残されていない古いデータはシステム課が管理しているので、資料探しに行く度に加郷と話をする。アプリケーションソフトの使い方で困った時も加郷を頼った。

 無口で不愛想な彼は、微笑みかけたところで誤解をするようなタイプではない。

 恋愛をあざ笑っているようなところがあるので、男性社員の中で唯一、彼には心を許せるし、時々路地裏の店で一緒にランチをしたりする。

『何を勘違いしているのか、たまにラブレターとか送りあっているバカがいるが、社内メールは筒抜けだって、何回言えばわかるんだろうな。管理する俺たちの身にもなれっての』
 加郷は時々そんな愚痴をこぼす。

 誰に読まれても誤解されないように、メールはあくまで事務的に書けよ言っていたとおり、開封したメールの内容はどこまでも事務的な文章だった。

【吉月さん。お疲れ様です。
 パスワードは、仮ということで今までのものにしておきましたが、変更してください。よろしくお願いします。
 また、不具合などありましたら、いつでもご連絡ください。
 情報システム課 加郷】
< 31 / 206 >

この作品をシェア

pagetop