政略夫婦の愛滾る情夜~冷徹御曹司は独占欲に火を灯す~
 漏れ聞こえてくる話によると、会長はワンマンで気難しい人だという。梨花さんは悪口などは言わないが、多分気疲れも多いに違いない。

「大変ですね」

 梨花さんは言葉で肯定する代わりに、小さく肩をすくめる。

「専務、ご機嫌斜めになるかもしれないわよ」

「なにかあったんですか?」

「織田不動産の令嬢と縁談があるらしいわ。でも専務が嫌がっているみたい」

「あらら」

「専務ってまさかと思うけど、女嫌い?」

「ええ?」
 青扇ではどうだったのよと聞かれて、うーんと考えた。

「女の子を連れてあるってたとかある?」

 言われてみれば、ないかもしれない。

「もしかして、あっち?」

「あっちっ?」
 もしかして同性愛とか、そういう?

「冗談よ。私の勘だけど、ゲイではないわね。でもどんな女性が好みなのか、さっぱりわからないわ」

(あー、ビックリした)

 梨花さんたら何を言うかなと思いながら、確かにそうだと思う。専務の女性の好みはわからない。
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