政略夫婦の愛滾る情夜~冷徹御曹司は独占欲に火を灯す~
 私の一学年上にものすごい美人がいて(と言ってもLaLaさんの次にだけれど)、須王さまファンで有名だった。

『須王さまが好きなの』と言ってはばからず、男子学生を寄せ付けないのは学園の誰もが知る有名な話で、実際バレンタインなどの行事の度に彼を追いかけまわしていた。

 でも彼は全く眼中にないようだった。

 彼女がどんなに必死にプレゼントを差し出しても、ポケットに入れた手を出さず、思い切り無視して通り過ぎた。

 その時の様子を私はこの目で見ているのだから間違いない。

 追いすがった彼女に何かひとこと言い放って行ってしまった。声は聞こえなかったけれど冷たいひと言だったと思う。

 何しろ彼女は、その場で泣き崩れたのだから。

 私には関係ないのに、彼女が気の毒で見ている私まで傷ついた。受け取るくらいしてあげてもいいのに冷たいなぁと思ったのを覚えている。

 彼が女の子と並んで歩いているとか話をしているのは見た記憶がない。
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