政略夫婦の愛滾る情夜~冷徹御曹司は独占欲に火を灯す~
「次は何を」と聞くと案の定、宗方さんは少し困った顔をする。

「お仕事がないようでしたら私、会社を辞めたいと思っています。どう考えても必要ないと思いますし」

 仕事はない。避けられる。
 それだけで十分な退職理由になると思う。

 西園寺に行けなくなってもかまわない。気を使って避けられて、なんだかもう意地を張る気もなくなってしまった。

 私から言い出せばホッとするだろう。専務も宗方さんも。

 そう思えば切ないけれど、仕方がない。

 今日出勤するときから決めていた。専務に避けられているようなら辞めようと。

「なんとかしましょう」
 宗方さんは真っすぐに私を見つめ返す。

「え?」

「仕事について、専務に相談しましょうか」

 てっきり困った顔になると思ったのに、そうではなかった。

 何を思うのか宗方さんはスッキリとした表情で微笑み、専務室の扉に手をかけ、おいでというように手招きをする。

 失礼しますと声を掛けて宗方さんが先に専務室に入っていった。

 私はそっと後に続く。
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