政略夫婦の愛滾る情夜~冷徹御曹司は独占欲に火を灯す~
「吉月さん、須王専務が部屋でお待ちです。あなたとふたりだけでお話がしたいとのことです。折角の機会ですから、何でも話したらいい」
「――わかりました」
泣いたおかげで緊張の糸は切れていた。
クビになるならそれでいいと思ったし、どうして自分を秘書にしたのかとか、それももうどうでもよくなった。
言うべきはただひとつ。今まで須王専務に出してきたコーヒーのことを謝ること。
そして退職する。
「失礼します」
ノックをして専務室に入ると、専務は窓際に立っていた。
振り返った彼は「座って」と言う。
「はい」
促されたとおりソファーにそっと腰を下ろすと、黒いレザーのソファーは程よい弾力で私を受け止めてくれる。
普通の客は隣にある会議室に通される。ごく限られた人だけが直接この部屋に通されてこの上質なソファーを使う。その客にコーヒーかお茶を出すのは私の役目だったけれど、座るのは初めてだ。
「――わかりました」
泣いたおかげで緊張の糸は切れていた。
クビになるならそれでいいと思ったし、どうして自分を秘書にしたのかとか、それももうどうでもよくなった。
言うべきはただひとつ。今まで須王専務に出してきたコーヒーのことを謝ること。
そして退職する。
「失礼します」
ノックをして専務室に入ると、専務は窓際に立っていた。
振り返った彼は「座って」と言う。
「はい」
促されたとおりソファーにそっと腰を下ろすと、黒いレザーのソファーは程よい弾力で私を受け止めてくれる。
普通の客は隣にある会議室に通される。ごく限られた人だけが直接この部屋に通されてこの上質なソファーを使う。その客にコーヒーかお茶を出すのは私の役目だったけれど、座るのは初めてだ。