政略夫婦の愛滾る情夜~冷徹御曹司は独占欲に火を灯す~
 気が付けば身を乗り出してきた専務に、手を握られていた。

 驚きのあまり声も出ない。

 唖然と目を丸くして固まっていると、我に返ったらしい専務はギョッとしたように手を放してのけぞった。

「うわっ」
 つられて「うわっ」と手を引いてしまった。

「す、すまない」

「――い、いえ」

(い、一体なんなの?)

 辞めてはいけないのだろうか。よくわからないけれども、

「わ、わかりました……。もう少し頑張ってみます」

「そうか? 本当に」

「は、はい」

 途端にうれしそうな顔になった。正に満面の笑みを浮かべ、両手を広げたあとその手を合わせる専務は、まるで少年のよう。

 思わずクスッと笑ってしまう。
 笑っている場合ではないのだけれども。

「そうか、よかった。じゃあ明日、パーティがあるんだ。女性同伴なので一緒に行ってくれないか?」

「え? あぁ、は、はい。わかりました」

「今夜、何か予定は?」

(へ?、今夜?)

 パーティは明日? 今夜?
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