政略夫婦の愛滾る情夜~冷徹御曹司は独占欲に火を灯す~
「そ、そんな私は別に」

「ほら、そうやって赤くなるだろ? ツンケンしているくせに、そういうところだよ」

「もお、やめてよ」

「まぁとにかく、付き合っている男がいるとなれば、少しは周りもおとなしくなるだろ」

「うん。わかった、そうしてみる」

 久しぶりに会ったせいか、加郷はいつになく雄弁だった。

「香水つけるようになったのか?」

「え? あぁ、専務がね、頂き物の香水を使わないからって私にくれたの。せっかくだからつけているんだけど、もしかしてつけ過ぎかな? 臭い?」

「いや、別に臭くはねぇよ。だけどなんか、らしくない香りだな」

 そう言ったきり、その話を最後に加郷は急に無口になって、くるりと背中を向けた。

 ブレスレットに香水。どちらも須王専務にもらったもの。

(加郷、鋭すぎて怖いよ)

 席に戻ってパソコンを開くと、また誘いのメールが入っていた。

【今度の土曜、ちょっと早いんだけれど忘年会をやります。参加しませんか?】

 第三営業部からだ。
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