政略夫婦の愛滾る情夜~冷徹御曹司は独占欲に火を灯す~
 でも実際はそうじゃない。

 私のように実家がほんの少し資産家なだけの地方出身もいる。

 生粋の子息令嬢は、幼稚舎から大学まで全て青扇に通う。帰国子女や奨学金で入学するような優秀な学生は別として、私のようにさほどの資産家でもなく高等部しか通っていない子は、ピラミッドの底辺だ。

 底辺の自分が青扇出身だと胸を張ったのでは、頂点に君臨するお嬢様方に叱られてしまう。耳に入ったら瞬殺されかねないので、恐ろしさのあまり身震いしながら否定するけれど、そこら辺の事情がうまく伝わらない。

『特別枠なんてとんでもないですって』と全力で否定するけれど、笑って流される。

『またまたぁ、謙遜しちゃってぇ』

『本当に違うんですってば。私はピラミッドのド底辺なんですよ? ほんとーに一番下の。御曹司とかお嬢様とか、立派な方々とは挨拶しかしたことないんですよ?』

『青扇って"ごきげんよう"って挨拶するんでしょう?』

『ええ、まぁ……』

『"ごきげんよう"だって、きゃあ、すごーい。それにうちの御曹司も青扇だし』
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