王子と姫の狂おしい愛
二階堂が椿姫の部屋に駆けつける。
「椿姫様!?」
「身体がかなり熱い!」
琥珀が言った。

「とにかく熱を測ります。琥珀様は別に部屋を用意しますので、そちらに……
琥珀様を部屋に案内して」
二階堂が、メイドに声をかける。
「はい、かしこまりました。
琥珀様、こちらへ」
「俺も傍に……」
「琥珀様、ここにいられたら椿姫様の気が散ってしまいます。
今日は、別の部屋でお休みになって下さい」
「そう…だよな……」
琥珀は椿姫の頭を数回撫で、部屋を出たのだった。

椿姫はその後も熱が上がり、うなされていた。
「はぁはぁ……琥珀…」
「椿姫様…琥珀様は別の部屋にいらっしゃいますよ」
椿姫は腕を伸ばして、二階堂の袖を掴んだ。

「琥珀…傍にいて…?」
二階堂を琥珀と勘違いしているようで、熱で潤んだ瞳で二階堂に甘える椿姫。
その少し色っぽく可愛い甘えに、二階堂の押し殺していた感情が顔を出す。
少しずつ━━━━━━

二階堂はその小さな手を掴み、優しく握った。
「傍にいます。だから、安心して眠ってください」
「ん…」
すると、椿姫はその繋がれた手を頬に持っていき、擦り寄せた。
「え━━━?椿…姫、様?」
「安心する…おやすみ…なさい」
そのまま目を瞑った、椿姫だった。
荒々しかった椿姫の呼吸が、少し穏やかになる。

椿姫の柔らかな頬に、二階堂は身体が震えるのを感じる。元々椿姫に好意をもっていた、二階堂。
更に心をグッと奪われたような感覚。

ここで手を離さなければ………
そうしなければ、手遅れになる。
そう思うのに、手が離せない。
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