王子と姫の狂おしい愛
「とても安心して眠れたの」
「そうですか…夢に琥珀様がいたのかもしれませんね」
「フフ…そうね…!
でも起きて、二階堂がいてくれたから、それも安心する。いつもありがとう!
ほら、体調悪い時に一人って寂しいでしょ?」
「え?あ…そうですね……」
椿姫はきっと、二階堂の特別な気持ちなど全く気づいていない。
気づいていないから、こんな心を更に奪うような言葉を普通に言えるのだ。

コンコン━━━━
「椿姫」
「あ、琥珀…!」
その瞬間、椿姫がパッと華やかに微笑んだ。
その表情は、二階堂の心を突き刺すのに十分だった。

ドアの方に行こうとする椿姫の腕を、無意識に掴んだ。
「え?二階堂?」
「え?いや、あの…」
二階堂自身も自分の行動に、驚いていた。
これは完全な嫉妬だ。
琥珀の声を聞いただけで、あんなに表情が変わる事への嫉妬………一晩中傍にいて、手を握っていたのは自分なのに。
椿姫の琥珀への想いを突きつけられたような感覚。

「二階堂…痛い…離して?」
嫉妬の感情が、椿姫の腕を掴む手に力を加えさせていたのか、離した椿姫の腕には手形が薄くついていた。
「も、申し訳ありません!
まだ病み上がりですので、僕が行きます」
そう言って、ドアを開けに向かったのだ。

「琥珀様、おはようございます」
「ん。椿姫は?」
「琥珀!」
「椿姫!?大丈夫?ごめんね…俺が無理させたから……熱は?気分は?頭痛くない?起きて大丈夫なの?」
琥珀は椿姫の横に座り、頭を撫でながら顔を覗き込んだ。
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