王子と姫の狂おしい愛
「僕は、いつでも椿姫様の味方です。
きっとちゃんとわかってくれますよ。
椿姫様のお母様なんですから」
「うん…」

湯王邸に着き、玄関前で井高が待っていた。
「椿姫様、お待ちしておりました」
「遅くなって申し訳ありません」
井高と二階堂が挨拶しあう中、川下がやってくる。

「椿姫様、琥珀様がお部屋でお待ちです」
「えぇ…」
川下に連れられて、琥珀の部屋に向かった。
「あれ?川下さん、同じ香水?」
「え…?
あ…すみません。椿姫様の真似しちゃいました…!」
「そう…」
「あ…もし、お気分を害されたならすぐ拭き取ります!」
「ううん。大丈夫ですよ。
でも、いいなぁ…川下さんはずっと琥珀の傍にいられるから」
「…………私は、椿姫様が羨ましいです。
琥珀様に深く思われているから」
「…………え…?やっぱり…琥珀のこと……」
まさか、そんな返事が返ってくるとは思わなかった椿姫。思わず、立ち止まった。

「あ、いえ…だからって!お二人の邪魔しようなんて思ってません!ただ…傍にいたくて……」
慌てて弁解する、川下。
「大丈夫よ。初めて会った時から、そうだろうなぁって思ってたから。
ただ…傍にいたいかぁ…
…………どっちが…幸せなんだろう?
想われていても傍にいれないことと、他の人を想ってる好きな人の傍にいられること。
でも、どっちも辛いわね……」
「そう…ですね…」

部屋前に着き、ノックをすると勢いよくドアが開いた。
「椿姫!!」
琥珀に抱き締められていた。
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