意地悪な部長と私
「会いたいか?」

「え?」

「婚約者に」


会いたい。

ちゃんと会って話したい。


でもきっと、夏夢さんは嫌だと思う。

会いたいかって聞いてきたくせに、顔は会うなって言ってるもん。


「いえ、大丈夫です」

「大丈夫って顔してねぇけど?」


そりゃあ会いたいもん!

だけど…


「夏夢さんだって、会いたいか?って聞いてきたくせに、顔は会うなって言ってますよ」

「当たり前だ。だが、お前が前に進むには、会わないといけねぇと思う。だから、会いたいなら会えばいい。その代わり、俺も一緒にだけどな」


夏夢さん…

夏夢さんがここまで言ってくれてるんだ。

ちゃんと会って話さないと。


「ありがとうございます」

「明日、ここに連れてくる。いいな?」

「はい。待ってます」


大丈夫。

夏夢さんがいるんだから、何も怖がることなんてないんだよ。


そう自分に言い聞かせた。


明日、真実を知ることになる。
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