意地悪な部長と私
次の日、夏夢さんは約束通り雅留を連れてきた。

昔と何も変わっていない。


私が愛した人。

だけど、会って思ったのは…


私はやっぱり、夏夢さんが好き。

雅留じゃなくて夏夢さんが。


「優愛、久しぶりだな」

「うん、久しぶり」


2人は気まずくて、なかなか話しが進まない。

何を言っていいのかもわからない。


だけど、先に話し始めたのは雅留だった。


「兄貴のせいでこんなことになって、ごめんな」

「ううん、雅留が悪いんじゃない」

「それに…お前の母親のこと…どんなことであれ、俺が殺してしまった。謝って済む問題じゃないのはわかってる。だけど、本当にごめんなさい」


そう言って勢いよく土下座をした雅留。

きっと、ずっと気にしていたんだと思う。


ブレーキを壊したのが平井賢人なら、悪いのは雅留じゃない。

運転していたのは雅留かもしれないが、原因を故意に作った平井賢人が悪い。


「雅留、顔上げて?」

「優愛…」


今まで何も知らなくてごめんなさい。

雅留にこんな辛い思いさせてしまって、なのに私は何も知らず幸せに暮らしていてごめんなさい。
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