意地悪な部長と私
「黙って受け取れ、バカ!」


そう言って部長は寝室へ消えていった。

照れてる、間違いなく!


すごく嬉しい!

だってこの服…私が一番気に入った服だったから。


他にも何着か入っていた。

試着してないものも。


きっと、部長なりの優しさなのだろう。

わかりにくいけど。


「ありがとうございます」


聞こえてない、部長のいない部屋で静かに呟いた。

部長なりの優しさ、私への気づいい

それがすごく嬉しくて、居心地のいいところだった。


だけどそれと同時に、怖くもなっていた。

またあんな日みたいにならないかと。


少しの喜びもなくなるのではないか。

この居心地のいい場所もなくなってしまうのではないか。


彼女でもない、ただの居候だからいつかはなくなる。

わかっていても、なくならないでほしいと思った。

どうしてか、薄々気づいていたけど気づかないフリをする。


だって、壊れるんでないかって怖いから。

今はまだ、このままでいいんだって自分に言い聞かせることにした。
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