意地悪な部長と私
「ご心配おかけしてすみません」

「ほんとだ、まったく」


なんて言ってるけど、安心した顔をする部長。

手もまだ握っててくれている。

その手を握り返す。


「私、夢を見てたんです。母の」

「そうか」

「大好きだったママの腕の中にいて、もうこのままでいいやって思ってました」

「……」


部長は私の話しを黙って聞いてくれていた。


「でも、死ななくてよかったです!部長に会えたから」

「は?おまっ…」


ほんと、死ななくてよかった。

死んだら部長にもう会えなくなっていた。

そう思って言ったら、部長は照れていた。


「照れてます?部長」

「照れてなんかない」


なんて、そっぽを向く部長。

そっぽを向くときは照れているときって知ってますよ、部長。
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