幸せとはこの事か
おきな「美味しい!」
紅幸「だろ?」
紅幸くんは嬉しそうにこっちを見る。
おきな「こんなに美味しいなら店出せそう」
紅幸「お、じゃあ夢は料理人だな」
おきな「決め方雑すぎでしょ」
ふふっと笑いながら空っぽの胃袋のなかにどんどん入っていく。
おきな「今日はピザ食べるつもりだったけど真反対の和食だね」
紅幸「ピザ食べるつもりだったん?そりゃ申し訳ない」
おきな「栄養が足りないって言ってたの紅幸くんだよ」
紅幸「まぁまぁ、また今度頼みなよ」
次々と箸は止まらない。
誰かの手料理を食べたのは祖父母以来だから実質初めてだった。
おきな「…本当。美味しいね」
不思議と涙が溢れてきた。
紅幸くんは何も言わず優しく頭を撫でてくれた。
おきな「誰かの手料理ってこんなに暖かいんだね」
ぽたぽたと涙が落ちる。
紅幸「…俺で良ければいつでも作りに来るよ」
おきな「…うん。ありがとう」
落ち着いてきて、ゆっくりとご飯を食べ進める。
紅幸「今度にでも、4人でどっか食べに行こう」
おきな「へ…?」
紅幸「2人では食べに行けないけど4人でなら行けるだろ?」
そう言ってくれたのはきっと紅幸くんも寂しかったんだと思う。
1人でご飯を食べることが。2人で食べる美味しさを実感してしまったのだ。だけどそれは許されないから4人でと持ちかけたんだろう。
おきな「蒼星に…ご飯は作ってあげないの?」
紅幸「今はおきなのために作ってあげたい」
おきな「…ありがとう。また4人で行こう」
時間が過ぎていく。
食べ終わって私はソファでゆっくりしていて、痛めてるからと紅幸くんが代わりに食器洗いしてくれている。
不意にインターホンが鳴る。
おきな「誰だろ…」
紅幸「俺見てこようか?」
おきな「…いや、私の知り合いだったらやばいことなりそうだから行ってくるね」
そう言ってゆっくり歩いて、一応紅幸くんの靴を下駄箱に直して、お父さんとお母さんの靴を置いておく。そしてドアスコープを覗いて扉を開ける。
姐百音「おっす」
おきな「姐百音…どうしたの?」
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