オフィスの華(令和版)Episode.0~スノードロップ~
私は部屋の奥に引っ込み、バスローブを脱いで、昨日の下着とスーツを着込んだ。
そして、顔にメイクを施す。

すっぴんの顔を見せるのは耶刃さん一人で十分。

「ようやく出て来たぞ…第一営業部の華が…」

耶刃さんは意地悪な口調で言い放つ。
栗原さんもダイニングテーブルの椅子に腰を下ろして耶刃さんが出したコーヒーを啜っていた。
スーツ脱いだオフの彼。
ジーンズに黒の長Tシャツとパーカーを羽織ったラフな着こなしだけど、イケメンの彼が着こなすと不思議とお洒落に見えてしまった。

「おはよう御座います。小畑さん」

「おはよう御座います。栗原さん」

何食わぬ顔で挨拶する彼に私も何食わぬ顔で返す。

「・・・コイツに話しておいたから…俺とお前の仲」

「…まぁ、なんとなくは分かってましたけど…」

彼の黒縁の眼鏡の奥の切れ長の瞳が好奇な色を宿し、私達を見つめ、そう返した。
彼には最初からバレていたかもしれない。


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