オフィスの華(令和版)Episode.0~スノードロップ~
「これはキスじゃない医療行為だ。そして、今から君の風邪を治してあげるよ・・・」

「栗原さん貴方!!?」

「大丈夫…部長は帰って来ない…」
達観した様子で言い捨て、もう一度キスを落として来た。

最初から噛みつかれるような激しいキス。

優しさの欠片もなかった。
角度の違う激しいキスを落とされ、風邪の熱とは違う熱がカラダを焦がしていく。
カラダの奥から迫りあがる官能の熱。
キスだけでこんなにも感じてしまうんなんておかしい。

「抵抗しない方いいよ…二人の仲は秘密裡らしいけど…二人の社内キス…ネットに拡散させたら、どうなる?相手は相馬家の御曹司だ…禁止の社内恋愛だ…世間は確実に注目する…」


―――ネットに拡散??
今まで、考えも想像もしなかった。
恐ろしいコトを栗原さんはサラリと早口で言って、私を脅す。

今まで、見ていた彼とは全くの別人。
何かに取り憑かれているかのような変貌ぶり。



心の底から、怖いと感じた人間は彼が初めて。

浴衣の襟元から覗く首許のロザリオ。
聖なる十字架を身に着けながら、人を脅してカラダを奪おうなんて。

悪魔だ。

彼は私の腰許の帯を解きにかかった。

私には失うモノはないけど、耶刃さんには沢山ある。
唯のスリルだけの恋が彼の命取りになるかもしれない。
そう考えるとカラダが竦んでしまった。






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