オフィスの華(令和版)Episode.0~スノードロップ~
私は彼の心の傷に触れてしまった。
「ゴメンなさい…」

「部長の兄は金で教授を買収して、俺の居場所を奪ったんだ。何の後ろ盾もない俺には何も出来なかった・・・」

「私…」

「・・・俺が君に近づいた理由は唯一つ…部長から奪う為だ」

彼は私の唇をあの時と同じように奪った。

「んっ…あ・・・」

優しさはなく、唯奪うだけのどう猛な獣のようなキス。

これが彼の怒り、全てを奪った耶刃さんの兄への復讐心。

キスを落としながら、ブラウスのリボンを解いて、私の足の間に長い脚を割り込めていく。

「君のコトは全部調べた…母の再婚相手に迫られて、君の方から迫られたと嘘を付かれて…家を追い出されたんだろ?」

「どうしてそれを・・・」

「俺は副業で探偵してんだよ…でも、まさか…俺のアパートに越すなんて…」

彼は眼鏡を外して、不敵に笑って私の顔を見つめる。

キスだけで、立ってるのが精一杯なり、彼の方にカラダをよろけさせてしまった。

そんな私を抱き締めようとはせず、彼はキスだけで私を突き放した。

放された私のカラダはその場に崩れてしまう。

上から見下ろす彼の目は弄るように私を見つめる。
どうしようかと考え込んでいた。

「まぁ、いい…今は時間がない…」
そう吐き捨てて、隣の棚に行ってしまった。









< 60 / 96 >

この作品をシェア

pagetop