オフィスの華(令和版)Episode.0~スノードロップ~
「奈央ッ!」

耶刃さんは私を追い駆けて来た。
そして、休憩ルームへと押し込み、「ほら」とハンカチを差し出す。

「ありがとう」

頬を叩かれても、涙を見ても栗原さんは気にも留めない。

全面硝子の向こうは音もなく細い糸のような霧雨が降り続き、白い煙が燻ったように世界が濁って見える。


「奈央…消毒してやる」

耶刃さんは私の頬を優しく包み、自分から顔を逸らせないようにして、キスを落とした。

彼も激しい気性の持ち主だったけど。
今は彼の方が優しく見える。

彼に出逢うまでは…私は彼だけを見ていたはず。

なのに、今は・・・二人の間でココロが揺れる。


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