振り向いて欲しい

再会

私は今、市内の病院で薬剤師として働いている。卒業して2年。やっと先輩から独り立ちして働き始めた。患者さんの数も多く、また、入院患者さんへの薬の管理もあり日々気持ちは焦るばかり。人見知り気味だったのに高校での友達が私の精神的支えになっているのか前ほど壁を作ることなく、自分から多少は話しかけられるようになった。

慣れてしまえば私の素が出てきて、ちょっとしっかり、でもちょっと抜けてると評される。薬剤師として抜けてる、のはどうかと思うけれど仕事は別。何度も何度も確認しミスなくこなしている。
1年目のようにがむしゃらに、ではなく2年目になりようやく周りも見えてきた。やっとやりがいを見つけられ始めてきた。

「病棟回ってきます。」

私は配薬しに病棟をまわる。担当は循環器病棟。ナースステーションに入り近くの看護師に声をかけ配役を始める。

そんな時ふと懐かしい声が聞こえてきた。

「いつもお世話になってます。先生から新しい機種への変更を受け、持って参りました。」
振り返ると昔の無造作な髪型ではないがきちっとした短髪で笑顔の素敵なスーツの男性が大きな機械を持って立っていた。

あ…
高坂…くん？

高坂くんは私に気がつくことなく医師と話しながら行ってしまった。

ビックリした…高坂くんだよね？

卒業して7年。大人になった高坂くん。この前の同窓会ではちょっと見かけることしか出来なかった。あの時は前にも増してオーラが出てるように輝いていた。そのオーラに惹かれるように周りに人が集まっていた。高校の頃と一緒…。私には近づくことさえできなかった。私に気がついてくれることなんてなかった。
なんだか見かけただけでドキドキと早まる鼓動に手が震える。

深く呼吸を繰り返し私は調剤部へ戻った。