振り向いて欲しい
1週間が経ち忘れかけた頃、私のスマホアプリに通知1と付いているのが見えた。

昼休みに確認すると高坂くんから「今日午後から病院でアポがあるから行く。そんなに遅くならないからまたご飯に行こうぜ。」と。

本当に優しい人だなぁ。私に気を遣わなくていいのに。今日は6時には上がれるけどこの前よりは遅いから、と思い「ごめんなさい」と返信した。時間もそうだけどこの前高校の懐かしい話もしてしまったし間がもたないのではないか、という心配の方が強かった。

6時半を過ぎ病院を出て駅へ向かおうとすると門のとこで立っているスーツ姿の男性。高坂くん?!

ふと目があうと笑いながら片手をあげている。

私に合図してる?

後ろを振り返るが誰もいない。 

その姿がおかしかったのかますます笑顔の高坂くん。

「ごめん、断られたけど待ってたら出てくるかなーと思ってさ。時間ならあるし、もし迷惑じゃなかったらこのままご飯に行けたら嬉しいし、もしサーヤマンに予定があるなら声だけかけて帰るつもりだったんだ。」

私はまたすぐに反応できず無言になる。

「ストーカーみたいだと思ってる?」

「そんなことない!」
それだけは慌てて答えた。

狼狽える私の姿を見て笑顔になる高坂くん。

「で、今日のご予定は?」

「ないです…。」

「じゃ、行こう!」

今日は和食だな、と言いながら歩き始める姿を追いかけ付いていった。
今日もまた彼らしい気配りのもと、会話が途切れることなく話が進む。私もとても楽しい。
もともと苦手ではないお酒がついついすすんでしまう。彼も楽しげにビールから始まり地酒に。お互い明日が休みだとわかると飲み過ぎてしまった。

つい飲み過ぎてしまい私は「こんなに私にまで気を遣ってて疲れない?たまには自分の好きにしたっていいと思うよ。私はあの頃高坂くんに救われたけど高坂くんはみんなに親切にし過ぎて疲れちゃうよね。自分のために何かしてもいいんじゃない?高坂くんの周りの人だって高坂くんにしてもらうだけじゃなくしてあげたいって思ってると思うよ。だから高坂くんの周りにはいつも人がたくさんいるんだと思うよ。」なんて上から目線でつい言ってしまった。

それを聞いた高坂くんは固まっていた。
でも私は酔っていてそんなことに気が付きもしなかった。
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